フリーランスのWebライターは開業届を出した方がいいのか?
この疑問は会社員を辞めてWebライターとして独立したかつての私が抱いていた疑問です。
そこで、こちらではWebライターとして独立を考えている方のために、開業届に関連する情報をまるっとお届けします。
金銭的な損得にかなり影響する話ですので、ぜひ参考にしてください。
フリーランスのWebライターは開業届を出した方がいい?
ずばり、「フリーランスであれば出した方が良く、副業であれば基本的に出さなくてもいい」が結論です。以下、詳しく解説します。
フリーランスの場合は出した方がいい
フリーランスのWebライターになるのであれば、「個人事業の開業・廃業等届出書」(通称開業届)を出した方がいいです。
法律では、業務開始から1ヶ月以内に提出しなくてはならないことになっています。
ただし、期限を破ったからと言って罰則はなく、期限を過ぎてから提出しても問題ありません。
出しても出さなくても問題ないのに出した方がいい理由は、
- 事業用の銀行口座を作れたり
- 融資を受けやすくなったり
- 節税効果を期待できたりなど
それなりのメリットがあるからです。
副業の場合は出さなくてもいい
副業の場合は開業届を出さなくても問題ありません。
すでに会社員としての社会的信用があるため、開業届を出してまで社会的信用を手にいれる必要がないためです。
副業で開業届を出した方がいいのは、ある程度収益が増えたタイミングになります。
収入が増えるほど税金の負担は大きくなりますので、開業届を出し、青色申告を利用した方が節税効果を期待できます。
なお、青色申告の特別控除を利用して節税をするには、開業届を提出する際に、一緒に青色申告承認申請書の提出が必要です。
青色申告承認申請書に関する詳細は国税庁のサイトを参照してください。
フリーランスのWebライターが開業届を出すメリット
こちらでは改めてWebライターが開業届を出すメリットを紹介します。
青色申告で節税効果を期待できる
確定申告には、さまざまな優遇措置を受けられる「青色申告」という方法があります。
そして、青色申告をするには開業届を提出している必要があるのです。
青色申告によって受けられる優遇措置の内容は以下の通りです。
⑴65万円の特別控除がある
⑵30万円未満であれば固定資産を一括で経費計上できる
⑶家賃や光熱費、通信費などを一部経費にできる
⑷赤字を3年間繰り越せる
これらのうち、⑶は青色申告でなくても措置を受けられます。
ただし、50%を超えて事業用に使っていること、またそれを説明できる根拠があること、以上の条件を満たさなければ経費とみなされません。
つまり、同じ措置でも圧倒的に青色申告の方がハードルが低いのです。
経費が増えて利益を圧縮できれば、税負担が軽減されるので、より多くのお金を残せます。
社会的信用になる
開業届を提出すれば、事業を運営している事実を社会的に証明できます。
事業用の銀行口座の開設、事業用のクレジットカードの発行、金融機関からの融資、いずれも開業届の控えがないと厳しいことが多いです。
もっとも、融資に関しては開業届の控えがあったとしても不成立に終わることがあるので、あらかじめご容赦ください。
また、社会的信用という意味では、保育園の利用ができるというメリットもあります。
お子さんがいる方は、保育園が利用できれば仕事と育児の両立を図りやすくなるでしょう。
小規模企業共済を使える
小規模企業共済とは、フリーランス(個人事業主)が廃業したときのために、生活資金を積み立てておける国の制度です。
月額1000円〜7万円の範囲で掛金額を設定でき、掛けた金額は全額控除扱いになります。
つまり、小規模企業共済を使えば、年間で12000円〜84万円の税額控除が可能ということです。
ただし、掛金を受け取る際は、掛金はその年の所得と見なされるため、金額に応じた税金を支払う必要があります。
なお、利用開始から20年未満で任意解約をした場合は、戻ってくる金額は掛け金合計額を下回るので注意が必要です。
詳しくは中小機構のホームページを参照してください。
フリーランスのWebライターが開業届を出すデメリット
フリーランスのWebライターが開業届を出すのは青色申告ができたり、社会的信用を証明できたりなどのメリットがある一方で、デメリットもあります。
こちらでは2つのデメリットを紹介します。
失業保険を受けられない可能性がある
開業届を出すということは、個人で事業を始めることを意味します。
失業保険は失業している人が安定した生活をしながら再就職を支援する制度ですので、個人で事業をしている人は保険の対象外となります。
失業保険の受給を検討している場合は十分に注意してください。
社会保険の扶養から外れる可能性がある
先に念を押しておくと、開業届を出す=扶養から外れるというわけではありません。
開業届を出して、青色申告で確定申告をしたとしても、所得が48万円以下であれば所得税すら課税されないのです。
Webライターとしての総収入ー諸々の経費ー特別控除=所得
所得はこのように計算でき、48万円以下であれば所得税が課されません。
一方で、所得が多くて特別控除の対象にならない人は、社会保険の扶養から外れることがあります。
つまり、国民年金や健康保険を自分で払わなければならないということです。
具体的には所得が130万円までは扶養の範囲内なので、所得が130万円を超える個人事業主は扶養から外れます。
フリーランスのWebライターが開業届を出す方法
Webライターが開業届を出す方法を紹介します。
開業届の用紙は税務署や法務出張所で直接もらってもいいですし、国税庁のサイトからダウンロードしたり、『開業freee』のようなサービスを利用するのもありです。
開業届の書き方
開業届の書き方ですが、記入する項目が16個ほどあるので、いくつかポイントを絞って解説します。
- 職業について
ライター業、執筆業などと書けば問題ありません。
- 屋号
屋号は決まっていなければ書かなくても問題ありません。
確定申告の際に登録できますし、いつでも変更ができます。
- 所得の種類
こちらは「事業所得」を選びます。開業ですので「廃業の場合」の欄は無視して大丈夫です。
- 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無
青色申告書の承認申請書を一緒に出す場合は、「有」に丸をつけてください。
- 消費税に関する「課税事業者選択届出書」又は「事業廃止届出書」
特に提出する予定がなければ「無」に丸をつけてください。
- 事業概要
「Webサイトにおける記事の企画や執筆」などと書けば問題ありません。
開業届は原本と控えがあるので、両方作成して税務署に提出しましょう。
控えは返されるので、大切に保管しておいてください。
青色申告承認申請書の書き方
青色申告承認申請書も開業届と同じくの項目を記入する必要があります。注意したいのは以下の3点です。
- 事務所または所得の原因となる資産の名称及び所在地
事務所をかまえず自宅で開業する場合は「無し」で問題ありません。
- 簿記方式
「複式簿記」を選んでください。
- 備付帳簿名
65万円の特別控除を受ける場合は以下の8つの項目に丸をつけてください。
現金出納帳
売掛帳
買掛帳
経費帳
固定資産台帳
預金出納帳
総勘定元帳
仕訳帳
なお、10万円の特別控除の場合、仕訳帳と総勘定元帳は不要です。
開業届の提出方法
開業届の提出方法は、税務署に直接提出するか、郵送か、オンラインかの3択です。
なお、郵送で提出する場合は以下の書類が必要ですので注意してください。
- 開業届(原本と控え)
- マイナンバーカードのコピー ※ない場合は通知カードのコピーと免許証・パスポートなど顔写真がわかる身分証のコピー
- 青色申告承認申請書(原本と控え) ※青色申告を希望する場合
- 返信用封筒・84円切手
開業届も青色申告承認申請書も、どちらも原本と控えが必要ですので注意が必要です。
フリーランスのWebライターが開業届を出す際の注意点
開業届を出すのに慣れている人はまずいないので、色々と迷うことも出てくると思います。
そこでこちらでは、開業届を出す際の注意点を3つ紹介します。
屋号は必須ではない
1つは、屋号が必須ではない点です。
屋号がないと開業できないと思い込み、一生懸命屋号を考える人がたまにいますが、開業を急ぐ場合は後回しで大丈夫です。
先述のように、いつでも好きなタイミングで登録や変更ができます。
ちなみに、個人事業主が屋号を使う主な場面は、事業用の銀行口座を開設するときや領収書・請求書・契約書などを作成するときなどです。
ただし、これらはいずれも個人名義でも問題ないので、便宜上屋号の方が都合が良いという方だけ屋号を使うといいでしょう。
青色申告の特別控除を受ける場合は申請書が必要
開業届だけを提出しても、青色申告はできず、特別控除を受けられません。
必ず開業届を出すタイミングで、一緒に青色申告承認申請書を提出してください。
遅くても開業から2ヶ月以内に申請書を提出する必要があり、それを過ぎた場合、その年は白色申告しかできなくなります。
なお、青色申告承認申請書を出したとしても、あとで白色申告を選択することは可能です。
事務所の新設・増設・廃業・従業員は空欄でOK
事務所の新設・増設・廃業・従業員について記入する箇所がありますが、1人で自宅でWebライターを始める場合は全て該当しないので、記入しなくてOKです。
フリーランスのWebライターの開業届に関してよくある質問
最後に開業届に関してよくある質問に回答します。
開業届はいつ出せばいい?
開業届は、所得税法第229条によって事業開始から1ヶ月以内に提出することが定められています。
期限を過ぎて提出しても、何か罰則があるわけではありませんが、税務上のトラブルを避けるためにも、できるだけ期限は遵守しましょう。
開業届を出していない場合、確定申告はどうなる?
開業届を出していなくても確定申告はできますが、青色申告を選べなくなるデメリットがあります。
白色申告しかできないので、特別控除などの恩恵を受けることができません。
想定以上に収益が発生して青色申告をしたくなった時に、開業届を出していないと青色申告ができないので、注意してください。
Webライターを辞める時はどうするの?
開業届を出して事業をしているWebライターが辞める時は、廃業届を税務署に提出する必要があります。
廃業届の提出を怠った場合、税務署やその他の公的機関が事業終了を認識できず、無駄な税金が発生する可能性があるので注意しましょう。
まとめ
どの程度の規模でWebライターをやるにせよ、収益が発生するのであれば、開業届は出しておいた方が無難です。
また、青色申告承認申請書も一緒に提出しておきましょう。
いざという時に青色申告ができるので、税制上のメリットが大きいです。
私自身が開業届を出した時は、税金のことは何も調べずに適当に放置していたので、後々大変な目に逢いました。
開業届や確定申告などの事務作業は面倒に感じるかもしれませんが、後回しにしないことをオススメします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。